意味を持たせた回路図を書く

2020/06/04

KiCad

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KiCadに限った話ではないのですが、現存するカテゴリーで当てはまるのはKiCadなのでKiCadのネタとして書きます。

まずは2つの簡単な回路図を見てください。

電源コネクタとマイコンとコンデンサだけのシンプルな構成です。

この2つの回路図でネットリストを作成すると当たり前ですが全く同じネットリストが生成されます。

しかし私は必ず最初に掲載した回路図にします。

その意図はコンデンサはマイコンの電源に接続されたパスコン(バイパスコンデンサ)を意味する事を回路図で示しているからです。

基板設計者と基板パターン設計者が違う場合、ネットリストだけでは意思が伝わらない場合もありますので回路図上に文面で明記したり、別途資料で「C1はIC1の7ピン最短で配線」と明確に指示します。

(なのでKiCadの回路図に日本語を入れたいが日本語フォントをマージして再ビルドしなければいけないのでハードルは高い!)

この指示をやらないで下図のようなパターン配線をされた事がありました。

私がきちんと説明しなかったのが原因なのですが、これパスコンとしての役割はまったくありません。

まあ、パスコン自体あっても無くてもそれなりに動くので「問題ないのでは?」と思われる方もいるかもしれませんが、どうせ実装するならちゃんと理にかなった配置をしたいです。

パスコンの配置として正解なのは下図です。

接続の流れがコネクタ→コンデンサ→(最短で)マイコンの電源ピンとするのが正解で

コネクタ→マイコンの電源ピン→コンデンサの順に接続されてはパスコンの意味が薄れます。

パスコンは電源に乗っかって来たノイスをGNDに逃がしマイコンに入るのを阻止するのが役目です。

(マイコンが電源ピンを通して放出するノイズにも効果があります)

なのでマイコンの電源ピンの直前に配置するのが理想です。

また、一番最初の回路図のように書く事で、どのコンデンサがどの辺りに配置されているかも分かります。

以前、某大手企業の回路図を見た事がありますが、電源に接続されたコンデンサだけがA3サイズの回路図に大量に明記されていました。

全てパスコンの意味を持ったコンデンサなのですが、回路図からコンデンサの配置場所を探すのに苦労しました。

その回路図はパソコンの回路で数十ページにもおよぶ回路図なので役割ごとにページを分けていたのかもしれませんが、基板パターン設計者への情報は膨大だったと想像します。

また、完成した基板パターン図から電子回路設計者の意図した配置になっているかの確認も大変です。

回路図は単なる接続情報だけでなく、このように意味を持たせる事で無駄な資料なく基板パターン設計者に意思を伝える事や出来上がった基板の部品を自分で見つけるのも容易になりますので有効な手段です。

とは言え、なかなか上手く伝わらない事もあります。

以前私は基板パターン設計がメインな会社にいた事がありました。

そこには大ベテランから新人まで多くの基板パターン設計者がいましたが、電子回路を知らない人も多くいました。

そこで、電子回路をあまり知らない基板パターン設計者の時は線を引く前に部品レイアウトを提出してもらいます。

次にレイアウト図に蛍光ペンなどで「電源回路はこのエリアで」などの指示があれば完璧でしょう。

レイアウトが固まるといい感じでこちらが意図したパターン設計になってきます。

FPGAなどのピンの入れ替えが可能なICを使う場合は、ピン変更可能である事を伝えます。

回路図上でいいと思っていたピン配置なのに配線がやりにくい配置だったりする事もあります。

「電子回路を知らない人が基板のパターン設計ができるの?」と思われる方もいるかもしれませんが、回路図から生成されたネットリストは単なる接続情報でしかありません。

極端な話、基板パターン設計CADの操作方法さえ分かれば基板パターン設計は可能です。

そして回路設計者が要点や注意事項を伝えれば回路設計者の要求を満たす基板は作れます。

先ほどの2つのパターン図で離れた所にコンデンサを配置したパターン図もネットリストを基にすれば「正解」な基板パターン図なので、何も指示を出さずに「こんな所にコンデンサ置くな」と文句を言っても、基板パターン設計者はネットリストに則って設計していますから間違えではないのです。

基板が完成してから「これダメじゃん」と思っても後の祭りです。

そうならないためにもお互いの意思疎通は大事です。

自己紹介

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新潟県のとある企業で働いてます。
【できる事】
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C#(WinForms WPF)を使ったWindowsアプリケーション作成
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